幼児期の成長は本当に人それぞれ。わかってはいても、周囲の子と比べては落ち込む日々を何度も経験しました。
わが家の長女は、赤ちゃんの頃から発達がゆっくりめ。ズリバイやハイハイをしないことに不安を抱き、スプーンをうまく使えない姿にも心配が募りました。それでも少しずつ、本人のペースで前に進んできたのです。
ただ、どうしてもできなかったのが自転車。年少の頃、友達がスイスイとペダルをこぐ姿を見ても、娘自身はまったく気にする様子もなく、誕生日に贈った自転車も玄関で埃をかぶっていきました。
そんなある日、突然「私も自転車に乗りたい」と言い出したのです。
そこから始まったのは、家族総出の特訓。父と母が中腰で支えながら、必死にペダルを踏む娘。転んでは泣き、「もうやめる!」と投げ出しそうになる姿に何度も直面しました。そのたびに「お友達と一緒に乗れたら楽しいよね」と励まし続ける日々。
それでも娘の不器用さはなかなか克服されず、大きな転倒をきっかけに自転車の話すらしなくなりました。
私たちも「また乗りたくなったらそのときに練習すればいい」と無理に勧めることはせず、そっと見守るようにしました。
そして月日が流れたある日、思いがけない言葉を聞きました。
「また自転車、乗ってみたい。今度は一人で。」
支えはいらない、と宣言する娘をドキドキしながら見守っていると──なんと、ヨロヨロしながらも自力で前に進みはじめたのです。転ばずに、まっすぐに、こちらを見てニコッと笑うその顔は、少し照れながらも誇らしげで、とても眩しく見えました。
あとから聞くと、娘は自分でお友達にコツを尋ね、練習のヒントを得ていたのだそうです。
自転車に乗れたこと自体もうれしかったですが、それ以上に「自分で課題を乗り越える力」を見せてくれた娘の成長に、心から感動しました。